自由経済院「考え方の型を破ること:朝鮮王朝を正しく見る」
「朝鮮滅亡? 自分の既得権にだけ固執した士大夫(両班)のため」
「当時の歴史を行き過ぎた民族主義の観点から解釈……開かれた思考が必要」
2016.06.21 Newdaily
1948年8月15日、自由民主主義と市場経済体制を基盤とした大韓民国の歴史が始まった。大韓民国のまぶしい成長は全世界が認める驚くべき結果だった。だが、21世紀の韓国社会の考え方の相当部分は、まだ朝鮮時代の「性理学」の水準に留まっている。 朝鮮はメディアが包装しているように立派な国だけではなかった。士農工商という「階級構造」を立てて、浮かぶ雲をつかむようなことばかり語ったソンビ(知識階層)、事大主義を前面に出して自分たちの安危だけを心配した王朝のために国が滅びたのに、これに対する反省は殆どなかったという批判も受ける。
自由経済院は、21日、「朝鮮王朝を正しく見る:朝鮮を知ってこそ大韓民国の偉大さが分かる」をテーマとして「考えの型を破る第9次セミナー」を開いた。この日の討論会は、朝鮮末期の王朝の没落の原因を分析してその責任が誰にあるかを論じた。
司会を担当したヒョン・ジングォン自由経済院院長は、「朝鮮末期の当時、近代化を準備せず、守るべき思想と制度を整備できなかった朝鮮王朝に対して反省しなければならない」とし、「過去の歴史を確かめて、より良い大韓民国のための代案を模索するために今回の討論会を開催した。」と討論会を始めた。
提案を担当したイ・ヨンフン ソウル大学経済学部教授は、「現在の私たちの歴史教科書さえ、朝鮮王朝が滅びた原因について正しい説明をしていない。教科書の文脈そのままなら、日帝が攻め込んで来たからだと説明しているため。」とし、「それは明白な事実ではあるが、日帝が攻め込んで来たのをなぜ防ぐことができなかったのかということを私たちが自ら真剣に問い直す必要がある」と指摘した。イ教授は、「現在の大韓民国は、歴史のアイデンティティについて国民的意識がないことが最も大きい問題だ。そのような観点から歴史の本と子供たちの歴史教科書を見れば問題が分かる」と指摘した。また、「民族主義観点から朝鮮時代を眺めれば、美しいソンビ(知識階層)文化と性理学という政治哲学に圧縮することができる」とし、「教科書はこれを優しくて善良な文化とだけ説明している。だが、一方ではその善良なソンビ精神のために敵に対抗できずに崩壊したという見方もある」と主張した。
朝鮮王朝は日本帝国主義の侵入を受けて不当に消滅した王朝だった。日本の侵入で私たちの民族の収奪、略奪のような歴史があったことは事実だ。だが、歴史を説明する過程で、以後の「韓半島の近代化」がどのようになされたのかは扱わないでいるという説明だった。現在の歴史教科書は「民族意識を土台にした抵抗運動」だけ主に扱っているというのがイ・ヨンフン教授の指摘だった。
イ・ヨンフン教授は、「一言で整理すれば、朝鮮は“民の国”ではなかった。朝鮮王朝が滅びた理由は、王と両班の知性では創造的変化が生じなかったため」とし、「堅甲で囲まれた伝統文明はとても美しいが、それに幻惑されて正しい歴史を眺めることができないのでは困る。」と指摘した。教授は、「朝鮮王朝が滅びたことは、大きく見れば人類史の一断面に過ぎないことだ。悲しいことだが大きな心でその点を前提にしておく必要がある」とし、「これからは、20世紀の韓国史を、狭い視野から抜け出して文明史の大転換という広い見地から改めて眺める必要がある。過去をさっと振り払って前に進むことが朝鮮を眺める基本前提でなければならないだろう。」と提案した。イ・ヨンフン教授は、「朝鮮末期の歴史は、民族主義を反省する意味で振り返って見る必要がある。無条件に批判をするというのではなく、これまで美化されてきた朝鮮王朝に対する事実を明らかにする必要があるということだ。」と指摘した。
討論を引き受けたケ・スンボム西江大学史学科教授は、「現在の朝鮮王朝の偏向的な解釈は、当時の時代的な雰囲気のためだった」とし、「解放後には植民史観を克服することが最も大きな時代の要請であったためにそうなったのだろう。」と解説した。ケ教授は、「現在、朝鮮王朝を眺める異なる見解がなぜ教科書に反映されないでいるのかというと、維新の時期の教科書国定化を挙げられる。当時、教科書は中央政府で強力に統制したため」とし、「実際に70年代の教科書を見れば、あまりにも民族主義的だ。例えば、衛正斥邪を強力な民族主義運動だと説明するのが代表的だ。当時の時代がこのような部分を要求していたようだ。」と解説した。
朝鮮の歴史を政治、社会、経済的に解説する時、「当時の朝鮮は発展していた」という結論を出すために関連の部分を強調したことが問題だというケ・スンボム教授の説明だ。同教授は「『ソンビはいない』という本を書くことで儒教的価値で彼らを評価して見たところ、とても美化されているという事実を知ることになった」とし、「当時の彼らには<noblesse oblige(指導層が持つ道徳的義務)>の精神はなかった」と指摘した。
ケ・スンボム教授は、朝鮮末期にソンビ階層が独占した政治、経済、文化のいずれも日本に侵略されたという。だが、外勢の侵略に対して全ての権力を独占していたソンビは責任を負わなかったのだ。ケ教授は「当時、ソンビは既得権を守るために改革を先送りして変化を恐れただけだ」とし、「自分自身を強調して国家共同体は守らなかったソンビたちの思考によってこのような問題が発生したと思う。」と付け加えた。
朝鮮王朝滅亡の問題は現在の韓国社会の問題にも続くという。当時の朝鮮の最上層エリートと100年後の現在の韓国最上層は社会全体に対する責任感がない、というのがケ・スンボム教授の指摘だった。ケ教授は、「それでも朝鮮王朝が全て悪いのではない。滅亡と沈滞の原因は総合的に見なければならない」とし、「朝鮮王朝の没落は内部と外部の要因が合致して発生したものだ。当時の朝鮮王朝が愚かだったと批判だけをするよりは、問題を解決するには時期があまりにも遅れたこと、王朝の力量に比べて高い水準のことをやり遂げなければならなかったことが問題だった」として発言を終えた。
自由経済院討論会で出た話に共感できない人々もまた多いものと見られる。だが、人類歴史を通観すれば、一つの国が滅びる時、外勢の侵略の前に先に内部的に問題が深刻化していたという部分を見ることができる。すなわち、現在のメディアや歴史の本などを通してみる「朝鮮」の姿は当時の現実とは距離が遠いという指摘は十分に熟慮すべき部分と見える。
自由経済院の「考えの型を破るセミナー」は来る7月5日にも「誰がチョン・テイルを利用するのか」に続く。
翻訳者注:チョン・テイル・・・・・・韓国の労働運動を象徴する人物。縫製労働者として仕事をして劣悪な労働条件改善のために努力し、1970年11月、労働者は機械ではないと叫んで焼身自殺した。彼の死は韓国の労働運動発展の重要な契機になった。[ネイバー知識百科]チョン・テイル[全泰壱]
<コメント>
この人たちは、見たくないことでも史実はしっかり見なければならないという正しいことを訴えているわけで、そこが韓国世論の大勢と明確に違うところです。