朴枝香教授インタビュー(4)
『青少年版 解放前後史の再認識』を作る
朴枝香ソウル大学教授インタビュー(下) ~ 『解放前後史の再認識』、韓国近.現代史についての真摯な討論引き出す
[ニューライト・ドット・コム編集部 / 2006-05-16 ]
http://www.newright.or.kr/read.php?cataId=nr02000&num=1565
(翻訳4)
○歴史に「個人」を見つけたサッチャー、イギリスの歴史を変える
(問) キパラン出版社から新刊を準備していると聞きましたが。
英国史の制度的な面や政治的な側面を書いた本があります。その本の副題は、保守と改革のドラマでして、制度については書きましたが、人々の情緒とか文化的な側面は扱うことができなかったです。それを補うために、今度は文化的な面を主に扱いました。「イギリス人の国民性は何か」について書いた本です。私が専攻した英国史に対しては強い愛着があります。 イギリスは多くの国の中の一つというより、多くの面で模範になるに値する歴史を持った国だからです。資本主義、議会民主主義のように私たちが日常経験している制度は、ほとんど皆イギリスで始まったでしょう? 新しいことが始まる時にはすごい葛藤が生じるのに、血の対決を呼ばなかったのは何故なのか、があります。イギリスの歴史を良く知らなければなりません。イギリス史を知らせることを使命と思っています。残念ながら、我が国の人々は「イギリス史はつまらない」と思うようですが。
(問) 私も運動圏時代に、急進性のない英国史はつまらないと思いました。
ダイナミックなものがないと言うのは、それは事実ではないです。市民社会と言えばフランスと言う印象ですが、それはイギリスから来ました。韓国人は、イギリスの漸進的民主革命の過程はよく知らないで、ロシア、フランスの革命に魅力を感じますが、これは間違いです。血を流さずに革命を成功に導いて来たイギリスの歴史を知らせることに、使命感を感じています。
(問) サッチャー以後のイギリスの変化に対しては、どう見ていらっしゃいますか?
サッチャーは素晴らしい人物だと思います。20世紀のイギリスの歴史を画期的に変えた人を選びなさいと言えば、私は自信を持ってサッチャーを挙げます。チャーチルも偉大な政治家で、アトリー首相も良いですが、サッチャーの成した業績が最も偉大だと思います。サッチャーリズムと言いますね。名前にイズムが付けられたイギリスで唯一の政治家です。サッチャーの業績は驚くに値します。サッチャーに対しては極端的な評価がありますが、すべての人が同意するのが、サッチャーが「個人を発見して」イギリスが根本的に変わり始めたというのです。
サッチャー以後に、イギリスは根本的に変化して行きました。 個人より集団が重要で、個人の責任よりは社会の責任を問うという図式で20世紀が流れたのです。それとともに社会民主主義が出て来たりした訳ですが、サッチャーが果敢に「そうではない」と主張し始めたのです。歴史に個人を見出したのです。サッチャーは社会的正義も重要だが、国家的効率性が重要だと言った人ですよ。偉い人物です。「失業者救済など社会正義も重要だが、それを実現するためには効率的競争が重要だ。いや、競争と個人の独立こそ社会を発展させる要素だ。」と言う言葉を、サッチャー以前には誰も言わなかったのです。このことを勇気を持って語った人がサッチャーです。人々に憎まれる側面がありますが、誰も手をつけることができなかったことをしたのです。
○『青少年版解放前後史の再認識』出る
(問) 『解放前後史の再認識』の後続作業がありますか?
60年代以後を扱わなければなりませんが、60年代以後は研究があまり蓄積されておらず、また、あまり身近にあれば客観的に評価しにくいという側面がありますね。利害関係がある人が多いから。例えば、朴正煕を評価すると言えば、現実の政治家である朴槿恵という人と関連がありますから、政治的に問題になり得ます。だから時間を要するわけで、それで今すぐ必要なことは、青少年版です。さっきも申し上げたように、この本を平凡な方々が読んで面白いと言ってくれますが、それでも若い人々には難しいです。私たちの教科書はひどいです。まともな教科書を提供しなければなりません。そういう意味で、青少年版を作らなければなりません。そんな要望をたくさん聞いていまして、それで作業をしています。
(問)進んでいますか?
決心はしましたが、いかに要約して読みやすく書くのかが重要な問題です。青少年の情緒を理解する専門家が必要かも知れないですね。今年のうちには仕上げるつもりです。
(問) マンガを含めて青少年向けの歴史書はたくさんありますが、概して『解放前後史の認識』の亜流ですね。
教科書フォーラムでも取り組んでいますが、誤った歴史論理を正さなければなりません。青少年たちの読み物を整理する必要がありますね。
(問) 青少年たちには、『解放前後史の認識』の類の、単純で明快な論理が受け入れられやすいようです。
『解前史』は単純論理です。 論述学院家で(ほんやく?)左派の教材をたくさん用いています。二つの理由がありますが、一つは、学院の教師らの中に運動圏出身者が多いということ、もう一つは、学生たちに教えやすいのが、左派イデオロギーということでしょう。「これでなければ、あれだ。」、こんなふうです。歴史は複雑であり人間は矛盾した存在であるのに、二分論理で教えれば、均衡の取れた合理的な思考能力の発達に深刻な障害が生ずるようになります。大急ぎで、まともな青少年向け歴史書を作り上げるしかないのです。本を作り上げれば、運動圏の講師たちでも使うしかないでしょう。
○運動圏出身ニューライトの正直さを高く評価
(問) 最後に、自由主義連帯とニューライト運動に対して評価をお願いします。
よくやっていると思います。 私はニューライトの運動家だという評価を受けることは望みませんが、現政府がおかしなことをする時一番迅速に対応されるのを見て、もう少し早くこのような方々が出ていたら2003年以後の歴史はこんなふうにならなかったはずだと思いますね。よくやっていますよ。
(問) 過去の運動圏の出身者たちがニューライト運動の一線にあることを、どう見ますか?
私は、良いことだと思います。 一方には、志操が無いと批判する人もいるようですが、私は、とても勇気を持った方々だと思います。自分が間違っていたと認めることは、勇気がなければできません。そういう意味で、アン・ビョンジク教授はすごいと思います。実は今、学者たちの中に、自分の左派的思考が間違っていたという事実を感じている人々は少なくないと思います。しかし公には大多数が適当にやり過ごしていまして、こんな点でも、アン・ビョンジク教授など運動圏出身のニューライトの正直さを高く評価します。
(問) 西洋現代史では知識人たちの左から右への転換を自然なものと見ますが、それに比べ我が国では、思想を立てた上で独特の接近をします。こんな風潮はどう見ますか?
儒教文化のためでしょう。もちろん、儒教には良いことも多いですね。しかし、名分や威信に過度に囚われる傾向は問題です。名分論、これは私たちの社会の大きい病幤です。これを壊さなければなりません。私も一時は、イギリス共産党出身の歴史学者エリック・ホッブスボーン(Hobsbawm, Eric John Ernst)の弟子であることを誇らしく思ったマルクス主義者でした。「若くしてマルクス主義者にならない者は馬鹿だ、年を取ってもマルクス主義者に留まっている者はもっと馬鹿だ。」というポッパー(Karl Raimund Popper)の言葉が今更ながら思い返されます。
長時間のインタビューに感謝いたします。 (終り)