イ・ヨンフン教授の竹島/独島論
イ・ヨンフン教授は、その著書『反日種族主義』と『反日種族主義との闘争』において、竹島(独島)問題に関して、韓国人たちの常識に真っ向から挑戦する(したがって、日本側の常識にはかなり近い)、韓国内においては非常に斬新な見解を発表しました。その要点は次のようなことです。
(イ・ヨンフン氏はもう教授ではないのだが、このブログではずーっと「イ・ヨンフン教授」のことを紹介して来たので何か変えにくい。イ・ヨンフン李承晩学堂校長ってのも何だかなあ・・・・・・それと、このブログは当初はイ・ヨンフン教授の言説を中心に紹介していて、途中から竹島問題中心に変わって来たのだが、その両者が交叉することはないだろうと思っていたところ、イ・ヨンフン教授がいよいよ竹島問題を取り上げたことで二大テーマが見事に交叉した。)
1 韓国には独島が歴史的に韓国の領土だと言える根拠はない。
・于山島は幻想の島であって、独島ではない。
・1900年大韓帝国勅令41号の「石島」も独島ではない。
・1905年に日本が独島を領土編入するまで、大韓帝国政府は独島の客観的存在を認知せず、相応する領有体制を成立させたこともなかった。
・韓国政府は日本の独島領土編入を知ったとき、抗議をしようと思えばできる状況だったのに抗議はしなかった。
・韓国政府には独島が韓国の固有の領土であることを証明するほどの国際司法裁判所に提出できる資料は何もない。
2 サンフランシスコ条約では、条約の主管国アメリカが独島は日本のものと判断したから独島は日本が放棄する範囲に含まれなかった。
3 独島は李承晩が新生韓国を軽んずるなという政治的意図から、初めて領土化したものだ。李承晩は歴史記録を根拠にそういう決断を下したのではない。独島紛争を巡って歴史学者が正当性を論ずる主体として前面に出て来るのはナンセンスだ。彼らは必要に応じて呼び出される助演に過ぎない。
4 李承晩の独島編入は、日本とアメリカからの独立を宣言し、新生韓国の国民を統合する象徴としての意味があった。しかし、あまりに作為的で副作用を伴うしかない選択でもあった。その副作用の克服は後代が担うべき歴史的課題だ。
5 韓国人は独島を反日の象徴とする煽動をやめて、とりあえず両国間の紛争は過去のような低い水準で管理すべきだ。
このイ・ヨンフン教授の竹島論の最大の特色は、つまり、竹島紛争の発生は李ラインからだと指摘することによって、とりあえず日本の主張と韓国の主張を正面から対峙させようとしているということです。もちろん、事実は竹島紛争の発生は李ラインを契機としているのであり、だから日本政府もそのように主張しているわけですが、これに対して韓国側はそこから話をそらすためにありとあらゆる歴史的資料を持ち出して来てはウソばかり言うことに全力を挙げているので、イ・ヨンフン教授は韓国側のいう「歴史的根拠」なるものが全てウソであることを指摘して、竹島問題の起点を史実のとおりに李ラインによる独島領土化に置くことでまずは両国の主張を同じ土俵に乗せて、その上で韓国人たちに李ラインによる独島領土化をどう評価すべきなのか考えさせようとしているわけです。
イ・ヨンフン教授は前著『反日種族主義』の日本語版序文で次のように言いました。
「独島紛争に典型的に見られるように、李承晩大統領の反日政策が残した副作用は大きく、今も長く尾をひいています。彼の理念と業績を再評価するための李承晩学堂の活動には、彼が残した負の遺産を克服する努力も含まれています。」
李承晩が残した負の遺産とは、韓国人たちのものの考え方に及ぼした影響という面もあるでしょうが、目に見える形で現在も存在しているのは竹島問題だけではないですかね。イ・ヨンフン教授としては、「独島は実は日本のものだ」なんて明言することは不可能(仮に言ったとしても最大級の反発を受けて意味がなくなる)な韓国にあって、問題の正しい解き方を提示することによって竹島問題が将来的に解決に向かうように現時点で最善の問題提起をしたと言えます。
イ・ヨンフン教授のこの姿勢は高く評価されるべきものですが、もちろんそれは韓国内の問題ですから、日本側はそれとは関係なくもっと積極的に竹島奪還の動きを進めて行くべきですね。(イ・ヨンフン教授が韓国側の歴史的主張を全て否定したことは、程度はともかくとしても、方向性としては確実に日本に有利に働くことだし。)

2021年新年の辞を述べるイ・ヨンフン李承晩学堂校長。「去年は体調が悪くて皆さんの前に出ることが少なかったですが、今年は皆さんと共にいられるよう努めます」というようなことを述べている。
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